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文科系アウトドア派のんびり遊楽人

「長州が可哀そうではないか」

April 16, 2007

 竜馬が西郷に、「長州が可哀そうではないか」と叫ぶようにいった。

 長州藩と薩摩藩の同盟が難航していた。

 外様藩ながら、独力で経済力を持ち、将軍家とも親密な薩摩藩の西郷隆盛・・・。

 藩内部で佐幕派と勤皇派が勢力争いしている長州藩の桂小五郎、高杉晋作、伊藤俊輔、井上聞多・・・。



 薩摩藩の若い藩主であり、ご意見番でもある島津久光から叱咤激励された西郷は、自藩の利益のために、立場上窮地に陥っていた長州の桂を恫喝した。



 当時、藩内の調整不足から出遅れていた桂は、革新派の高杉に長州藩の動向を説いたが、意見が定まらないまま「そうせい侯」と呼ばれる藩主毛利敬親に伺いを立てようとしていた。

 そこに海軍練習所の師匠である勝から、今回の同盟の発案者であり、西郷、桂の両者と親交の深い坂本竜馬に仲介の命が下った。



 日本の行く末を憂う竜馬は、西郷と桂、それぞれに自藩の利益とともに日本の将来についてひたすら説いた。

 <「まだその藩なるものの迷妄が醒めぬか。薩州がどうした、長州がなんじゃ。要は日本ではないか、小五郎」>

 <「われわれ土州人は、血風惨雨。・・・・・・の中をくぐって奔走し、身命をかえりみなかった。それは土州のためであったか、ちがうぞ」>

 <「ほろんでもかまわぬ」と桂は激昂をおさえつつ、小さく叫ぶようにいう。>

 竜馬は土佐藩出身だが、勝の計らいもあり、藩主の山内容堂の支配とは別に自由な活動をすることができた。それに竜馬は会場費と消耗品費いう財力とこれまで浪人の立場で得た広い人脈と有能な部下、同僚に恵まれていた。

 

 時間と社会的状況に追い込まれていた長州藩は、薩摩の西郷に直談判をして善後策を立てると言っていた竜馬が他事で時間をとられている間に、藩主のもと、同盟離脱を決めてしまった。

 このままではWin-Loseになり、日本にとり不幸な結果となると憂いだ竜馬は、今日の午前中に単独で薩摩藩に入り、全権大使の西郷に長州の窮状と熱意を説き、藩内の大久保一蔵、小松帯刀にも西郷の晦渋を迫った。

 <あとは、感情の処理だけである。桂の感情は果然硬化し、席をはらって帰国しようとした。薩摩側も、なお藩の対面と威厳のため黙している。>

 <この段階で竜馬は西郷に、「長州が可哀そうではないか」と叫ぶようにいった。>

 西郷はついに膝を正し、薩長連合のことは竜馬に任せようというところまでこぎつけた。

 <締盟の日が即座にきまった。>



 西郷から一任を受けた竜馬は4階から1階の長州藩にアポをとり、桂、高杉、伊藤、井上との交渉に臨んだのだ。

 若いが槍の名手、のちに寺田屋で重症を負ったときにも同席していた三吉慎蔵を引きつれ、西郷の本心と言葉を不信感を抱いている彼らに伝えた。

 もともと窮地の中から最良の策を講じていた長州の面々から、日本のためという大名目のため、藩主に再申し出することの確約を得て、竜馬は自席に戻り、桂からの連絡を待っていた。

 竜馬が国際商会の株主総会の打ち合わせをしているとき、留守を守っていた海援隊随一の秀才の陸奥陽之助から桂からの伝言が入った。

 「急きょおいで願いたし」

 

 2階の教会から飛ぶように階段を駆け下り桂のところに飛んだ。

 「当初の案どおりで承知つかまわった」

 桂のこの言葉により、今回の同盟が成立し、将来の成功が見えてきた。



 竜馬は喜びを隠せず、自席で職務に励んでいた陸奥、三吉に成功を報告し、その足で4階にかけあがり、再度、西郷、大久保、小松が残業している薩摩藩に走りこんだ。

 竜馬の報告を受けた西郷はほっとしながらも、長州藩との関係を気にしていた。

 「それでは、今から拙者とお礼の品をさりげなく持って行こうではないか」

 西郷は薩摩藩で購入した道具を小松から預かり、竜馬とともに長州入りした。

 そこには藩政を担う、かつての盟友の桂が待っていた。

 竜馬が西郷と桂に明るく話しかけた。

 「無事成功の暁にはびわの会でもやろうかのぉ」



 <「三吉くん、成功だった」と竜馬がいうと、慎蔵は帳場で小躍りしてよろこび、「天下の事はもはや成った」といった。>



 外は雨が降っており、いつも歩いて自宅に帰る竜馬が、めずらしくお竜に携帯電話をかけ「おまえさん、今夜は迎えに来てくれるかえ」ときいた。

 

 以上、オレをとりまく状況を司馬遼太郎著「竜馬がゆく」の文庫版第6巻の薩長同盟の件を引用して表現した。

 なお<  >でくくった部分は小説からの引用である。

 <「おれは日本を生まれかわらせたかっただけで、生まれかわった日本で栄達するつもりはない」>

 <「こういう心境でなければ大事業というものはできない。おれが平素そういう心境でいたからこそ、一介の処士にすぎぬおれの意見を世の人々も傾聴してくれた。大事をなしとげたのも、そのおかげである」>

 <「仕事というものは、全部をやっていはいけない。八分まででいい。八分までが困難の道である。あとの二分はたれでも出来る。その二分は人にやらせて完成の功を譲ってしまう。それでなければ大事業というものはできない。>

 以上、第8巻からの竜馬の大政奉還成就後の心境を抜粋した。



 オレの近い存在のあなたなら、登場人物がすべて実在の人物に呼応していることに気がつくかもしれない。

 実際の西郷と桂は外観がまったく逆じゃが・・・。

 仕事の危機を乗り切った興奮冷めやらず昨夜に続き寝不足になりそうなTackeyでした。




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